電車の座席は誰に譲る? お年寄りが元気な日本と香港の座席事情

先月、NHKのニュースウォッチ9で「抱っこされている赤ちゃんが、お母さんが座ると泣き出す現象が科学的に証明された」という特集をやっていました。

世のお母さん方は、電車の中で親切な人から座席を譲ってもらっても、お母さんが座った途端に赤ちゃんが泣き出すから、「ありがたい&申し訳ない」と思いつつも、座席に座るのはお断りするらしいです。

内容の詳細はNHK 生活情報ブログを読んで頂ければ分かるかと思います。

特集の最後に、桑子アナが「お母さん方は、断りつつも、声がけしてもらえるのはありがたいと思っているので、ぜひこれからも座席を譲る声がけをしてください」というコメントで締めてたんですが、

えー。こんな締め方じゃ、更なる「気遣い」が発動して赤ちゃん連れに席譲る人減るでしょ

と、邪悪な私は思いました。ほほほ。

だって、「子どもが泣くから座りません。でも、声はかけてね」ってちょっとめんどくさいし、そもそも「電車で赤ちゃんが泣くのは迷惑」っていう風潮をどうにかすればいいだけなんじゃないの、と私は思ってしまいます。お母さんが座席に座ったことで、赤ちゃんが泣いたのならば、座ってあやせばいいんじゃないですかね。それで、泣き止むかどうかは置いておいて。大体、そんな風潮自体が少数派の意見なのに、「『すれ違う人全員に悪く思われないようにしよう』なんて思う必要ある?」と子どもがいない私は思ってしまうのです。

実際に、その研究をしていた方もテレビで話していましたが、お母さんが座ることで、赤ちゃんはリラックス状態ではなくなってしまうけれども、お母さんにとっては体の負担が減り、急停車による転倒を避けることができるから、「できれば座って欲しい」とのことなので、私としても人目を気にせず座っていただきたいな、と思ってしまいます。

日本の若者は、お年寄りに座席を譲らないって言うけれど…

よく「最近の若者」を嘆く時に出てくる代表的な話題として、「会社の飲み会に参加したがらない」「お年寄りに座席を譲らない」という話が出てきます。私が記憶している限り、前者はここ10年ぐらいで言われ始めたような気がしますが、後者は私が小学生ぐらいの時からずーっと言われているような気がします。

最初に「お年寄りに席を譲らなかった世代」が、もうそこそこいい年になって、子どもが生まれて、今はその子どもたちが「最近の若者は、お年寄りに座席を譲らない」と言われているんじゃないでしょうか。

ただ、今でこそ若者ではない私も、「お年寄りに席を譲らない」というレッテル貼られた青春時代を過ごしてきたので、言わせて頂くと、

せっかく譲っても断ってきたのは、そっちじゃん!

私も、小学生の頃に年配の方に席を譲って「いやいや、いいからいいから」とあっさり断られて落ち込んだ経験があります。今となっては、断った年配の方(本当に年配だったんだろうか?)の気持ちも少しわかるようになりましたが、子どもって世界・視野が狭いから、良かれと思ってしたことをあっさり断られてしまうと、結構傷つくし、はずかしい事をしたと思ってしまうんですよね。

そういう経験があってから、学生時代の私は、「あの人に席を譲った方がいいのかな。でも、また断られるかもしれないし…どうしよう」と、本来悩む必要のない事で悩み、そうこうしているうちにその人が電車から降りてしまう、という事が何度もありました。

大人になってようやく、「子どもに座席を譲られた=自分ではまだまだ若いつもりなのに、お年寄りに見られた!ショック!」という人の気持ちがわかるようになってきたので、どういう人が乗ってきたら座席を譲るか、自分の中で基準を設けるようになりました。

  • 明らかに立っているのが辛そうな人
    (腰が曲がっている、貧血気味など)
  • 杖を突いている人(松葉杖を含む)
  • マタニティマークをつけている人
  • 乳幼児を連れている人
  • その他、状況に応じて

「お年寄り」というカテゴリをなくして、老若男女問わず電車の中で立っているのが大変そうな人に限って譲る事にしました。だから、「時期的にスノボで折ったでしょ!」と言いたくなるような松葉杖をついた若いお兄さんに席を譲って、「たくさん洋服買ったね」と言いたくなるような60代過ぎのおばさんには譲らないという事もありました。

夜の混雑した電車内 座るべきなのは、小学生?60代のビジネスマン?それとも、30代の主婦?

さて、なぜこの香港でのあれこれをメインテーマにしたブログで「電車の座席を誰に譲るか問題」を書こうと思ったのか…ですが、去年の夏頃にちょっとびっくり&もやもやした出来事があって、「どこかのタイミングで、それを書きたいな」とずっと思っていたからです。それが、今回の桑子アナの違和感を覚えるコメントをきっかけに「書くなら今だ!」と思い、書く事にしました。(ちなみに、私は桑子アナは嫌いじゃないですよ!ブラタモリとか見てましたし。)

それは、夏の日の土曜日22時頃、MTRの車内で起きました。

私達夫婦が車内に乗った時は、まだそこまで混んではいなかったので、並びで座る事が出来ました。私の隣は優先席だったのですが、そこには小学生位の男の子がすでに座っていました。ご両親らしき人は二人とも立っていましたし、他にも席が空いてるのに、わざわざ優先席に座るっていうことは、「何かしら理由があるのかな」と思っていました。

*MTRの優先席は、日本の電車のように数人掛けの席を丸々優先席として設置している場合もありますが、数人掛けの席のうち、2席だけを優先席として設置している場合もあります。今回は後者でした。

電車が進むに連れ、沢山の人が乗車し、2駅目には座席は埋まり、3駅目には十分「混雑している」と言えるレベルになってきました。

4駅目ぐらいで、60代のピシッとスーツを着たビジネスマン風のおじさんが乗車し、真っ先に優先席に座る小学生の前に立ち、広東語で何かしらの事を言って、彼を立たせ、自分がその席に座りました。

正直、私はその時点で

え⁉︎なんで、遅い時間の満員電車なのに、子どもを立たせて自分が座るの?
ちゃんとした仕事もしてそうなのに…
と、びっくりしてしまいました。

「車内が空いてる時から優先席に座っていたし、時間帯も遅いし、さすがに子どもは座った方がいいでしょ」と思った私は、その小学生に席を譲る事にしました。すると、

子どもに席を譲る必要なんかないよ!

「え、日本語?もしかして、この人、日本人?」先ほどのおじさんが、流暢な日本語で私に言ったので、またまたびっくりしてしまいました。とりあえず、おじさんに圧倒された私は、小学生に席を譲るのは諦め、元の席に座る事にしました。

あ、日本の方ですか?
(失礼だけど、日本人だとしたら正直あんまり関わりたくないタイプ…)
ちがうよ、香港人だよ。日本語は昔ビジネスで必要だったから勉強したんだ

あら、香港人でしたか。
その後、私とおじさんは「香港には旅行で来たのか」「いつから香港に住み始めたのか」といった世間話から、先ほどの「なぜ子どもに席を譲る必要がないか」と言った話になりました。

理由は簡単。

子どもは元気だから座る必要がない
だそうです。それ以上でもそれ以下でもないそうです。

ちなみに、

日本人は絶対優先席には座らないよね、すぐわかる!

「う…うーん。どうだろう、座る人は座ると思うけど」と思いつつ、おじさんの話に耳を傾けているうちに、おじさんは電車を降りてしまいました。

おじさんが降りたので、先ほどの小学生を探してみると、すでに電車を降りた後でした。たったそれだけのできごとなのですが、「香港では、具合が悪いかどうかよりも、『年齢が上の人から順に座るべき』っていうのが絶対的に強い文化なのかな。」と、私の中ではちょっとモヤモヤが残る出来事となってしまいました。

若ければ元気?見た目が健康なら席を譲らせるべき?

先ほど、香港人のおじさんが「日本人は絶対優先席には座らない」と言っていたことを書きましたが、「空いているなら優先席でも座ってもいい。譲るべき人が来たら譲ればいい」という考え方の人もいると思います。私自身も学生の頃はそのように考えていたので、具合が悪いとか、健康上特に理由がなくても、空いていれば優先席に座って、譲るべき人が来たら譲っていました。そう、マタニティマークができるまでは…。

もちろん「妊婦さんには席を譲る」というのは、当時から頭の中にちゃんとインプットされていたのですが、「お腹が目立たない妊娠初期段階の人」にもちゃんと譲っていたかというと、おそらく譲ることはできていなかったと思います。当たり前ですね。妊娠が身近な出来事ではない年齢でしたし、30代になった今だって、人のお腹を見て「あの人は妊娠3カ月だ!」とか、瞬時に察するエスパー機能は身につけていないんですから。

マタニティマークができたおかげで「妊娠だけでなく、見た目だけではわからない障がいや病気もある」ということを理解したので、「優先席にはできるだけ座らないで、本当に必要な人のために空けておこう」と考えるようになりました。

だから、おじさんに対して抱いた違和感も、「元気そうに見えたあのおじさんもどこか具合が悪かったり、目に見えない障がいを抱えていたのかもしれない。でも、それは車内が空いてる時から、わざわざ優先席に座っていた小学生もそうだったのかもしれないのに」というところにあって、「若ければ若いほど元気で健常」という発想が私には受け入れ難かったんだと思います。香港はお年寄りや妊婦さんなどに率先して席を譲る文化だからなのか、マタニティマークが配布されていません。だから、見た目にあらわれにくい妊娠・病気・障がいなどに考えが至りにくいのかな、と思います。香港人全員がそうだとは思いませんが、おじさんのような考えを持っている人は、もしかしたら香港では少なくないのかもしれません。

日本も香港も年齢不詳のお年寄りが多すぎる!

しかし、ある日MTRに乗っていた時、ふと気が付きました。

あれ?私、日本に住んでいた時よりも、香港に来てからの方が人に座席を譲ってないかも…

「若者がお年寄りに席を譲る文化」と言われている香港で、なんということでしょう…。

言い訳させてください。マタニティマークがないため、妊娠中期を過ぎた妊婦さんじゃないと気がつかないというのもありますが、それ以上に問題なのがお年寄りです。香港では、「THEお年寄り」な見た目をしている人が少ないのです。

お年寄りに席を譲る若者

「お年寄りに席を譲る若者」のイラスト。こんなにもわかりやすいステレオタイプな「THEお年寄り」は、日本と香港では少数化の傾向にある

これは常に香港と長寿大国のトップ争いをする日本でも言えることなのですが、日本も香港も本当なら「お年寄り」が多いはずなのです。でも、パッと見ただけで、すぐに「あ!この人、お年寄りだ」と認定できる「THEお年寄り」が少ないのです。私が香港にまだ慣れていないせいもあるかと思いますが、香港は日本以上に「年齢不詳のお年寄り」が多いような気がします

そもそも、皆さんにとって「お年寄り(おじいちゃん・おばあちゃん)」って何歳からでしょうか。私の祖父母は結婚が早かったので、小学生の時は「50歳過ぎたらお年寄り」だと思っていました。我ながら、恐ろしいですね。しかし、定年退職して、退職金とこれまでの貯金であちこち海外を旅行している人や、平日に大勢で山登りに出かけて電車でワーワーとおしゃべりに花を咲かせる人なんかを見て、「少なくとも、60代はお年寄りじゃないな」と20代ぐらいから考えるようになりました。「じゃあ、70歳からお年寄りなのか?」と聞かれると、また困ってしまうんですが、どちらにせよ「お年寄りボーダー」を年齢で区切るのは、日本も香港も難しいなと感じています。

一時期、「例え、元気もりもりなお年寄りでも、お年寄りには席を譲る香港文化」に倣って、お年寄りの方が立っていたら席を譲ろうと、ちゃんと周りを見るようにしていたのですが、「この人はおじさん(おばさん)だから、譲らなくていいや。(なぜなら、私もおばさんだから)」と判定した人に、席を譲る香港人の若者を見てびっくりしたことが何回かありました。

え、あなたにとってこのおじさん(おばさん)は、席を譲るべき高齢者なの!?

日本で同じぐらいの年齢の人に言ったら、絶対に「俺(私)を年寄り扱いするな!」と怒られそうな人にまで譲るので、見ていてドキドキしてしまいます。私が見る限り、席を譲られた香港人はお礼を言ってそのまま座ります。遠慮する人や怒り出す人はいません。

このようなことが何回もあって、私は悟りました。「香港で、高齢者を見極めるのも、妊婦さんを見極めるのも、私には無理だ」と。だから、私はもう、香港では人に席を譲らないことにしました。正確に言えば、譲れない・譲る必要がない状況に持っていくことにしました。車内がガラガラで立っている方がおかしいぐらいにすいている時と、体調が悪い時だけ座って、基本的に立つことにしました。前は、少しでも座れるスペースを見つけたら、瞬時に席をゲットしていたのですが、今はもうバーに掴まって立っている日の方が圧倒的に多いです。

だって、私が「おじさん・おばさん」判定した人まで「席を譲るべきお年寄り」にカウントされるとなると、もう誰に譲ったらいいのかわかりませんよ。右も左もみんなお年寄りに見えます。もう、お手上げでーす。

私としては、年配の方も、赤ちゃんを抱っこしたお母さんも、子ども(できれば高校生ぐらいまで)から座席を譲られたら、座ってあげてほしいです。勇気を出してやった親切を、言葉足らずに遠慮されると、さらなる気遣いでがんじがらめになったこじらせた大人(私)が出来上がるので、「そんな年じゃないんだけど」とか「赤ちゃんにはこのまま静かに寝ててほしいんだけど」とか思っていても、譲ってくれた人が子どもなら、一旦座ってあげてください。最終的には、それが「席を譲らない若者=親切をするのに気遣いし過ぎて悩む若者」を減らすのに最も効果的な方法になると思います。



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